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衆議院議員 税理士 あんどう裕

ひろしの視点

HIROSHI’S POINT OF VIEW

ひろしの視点

2017/08/01

日本の「後進国化」が進んでいます

ほとんどの方がご存知ないと思いますが、先日、下記のニュースが朝日新聞で報道されていました。

『「財政難で補修見送り・・・老朽トンネル・橋・進む撤去」 老朽化した危険な橋・トンネルの存在が各地で判明し、撤去などの動きが加速している。国と自治体への取材では、2014年度に全国で始まった点検で、今年4月までに340カ所が補修や撤去など緊急措置の必要があると判定され、うち73カ所が撤去されたか撤去予定だった。財政難にあえぐ自治体が補修などで維持することを見送るケースが目立つ。(中略)アンケートでは、約4割の自治体が今後、使用頻度の少なさや財政不足などから橋・トンネルを減らしていく可能性を示唆しており、自治体が管理してきたインフラを手放す動きが本格的に始まったことがうかがえる。(後略)』

(2017年7月17日 朝日新聞DIGITAL)

実に恐ろしい話です。日本は本当に後進国になり始めています。国は「地方創生」のかけ声をかけてますが、地方創生を実現するためには、まず道路や鉄道、水道などの社会基盤整備、いわゆるインフラ整備をしなくてはなりません。かつての日本はこのインフラ整備に十分に投資をしていました。だから、今の日本では全国に道路があり、橋がありトンネルがあって、安心・安全にどこにでも短時間で行くことができるようになりました。私が子どもの頃も、家から学校にいく道路はもちろん舗装などされていませんでした。車が走れば砂ぼこりが舞い、雨が降ったら大きな水溜まりができて、水溜まりを飛び越えながら学校に行きました。橋も古いコンクリートの橋でしたが、だんだんと道路は舗装され、橋も架け替えられて車も人も歩きやすく安全になりました。これが経済成長であり、先進国化なのです。

ところが、今の日本は、世界第3位の経済大国と言いながら、地方の橋やトンネルの維持管理すらできない国になりかけています。先人たちが必死の努力で作ってくれた貴重なインフラを捨てようとしています。既に鉄道はその動きが顕著です。国鉄が民営化され、赤字路線は廃止されています。民間会社であれば、赤字路線を保有していることに意味を感じないので、廃線という選択をするのは仕方ないことです。

しかし、公営企業であれば、国有鉄道であれば話は別です。国土の均衡ある発展のために赤字と分かっていても鉄道を敷設し、その土地の経済発展の基盤とする。赤字は黒字路線の収益で補填する。そういう選択も合理的な判断です。そのおかげで、日本全国に鉄道網が張り巡らされたのです。

しかし、民営化以後この鉄道網は分断され、脆弱なものになっていきました。国鉄分割民営化は、昭和62年(1987年)4月1日に実行されましたが、当初から心配されたように、赤字路線の廃止は現実のものとなり、地方衰退の一因になっていることは否定できません。

このようなインフラ整備は、「公」という面を忘れてはなりません。昨今はあらゆる事業において黒字が求められます。もちろん、民間は黒字でなくてはなりませんが、政府部門は赤字であってもやらなくてはならない事業があります。その意味では国鉄の分割民営化は失敗であったということもできます。(もちろん国鉄の様々な課題を考えると、一概には言えない部分はあるようです。)

少し話がそれましたが、インフラ整備は、地方再生のためにも決しておろそかにしてはならないのです。特に、地方の道路は生活や産業の基盤です。橋やトンネルの管理を怠れば、大規模な事故につながります。そのため、地方自治体では「補修」か「撤去」の判断が求められているわけですが、将来の資金負担の必要がない「撤去」を選択する自治体が増えているのは、本格的な地方の衰退、後進国化が深刻なものになりつつあるということなのです。

本当は、財源は国が支援すればいくらでも予算を付けることができるのです。きちんとした管理補修計画を立てて、毎年確実に実施していけば良いだけです。地方にも仕事が回りますし地方の雇用の維持、そして技術継承にもつながります。一石二鳥どころか、一石三鳥も四鳥もあるのです。本当は、このような課題を国会でも取り上げるべきだし政策としても実行していくべきです。下手な地方創生のかけ声よりも、よほど地方創生に役立ちます。

このような日本の「後進国化」に政府もマスコミも政治家も鈍感であることがとても不思議で残念です。

また、九州北部地方では大変な豪雨があり、大きな被害が発生しました。その後、東北でも大雨が降り、異常気象がすでに常態化し、異常ではない状況になっています。

昔から「治山治水は政(まつりごと)の要である」と言われてきたように、日本は自然災害の多い国であり、為政者は常に災害をいかに防ぐかを考えながら政治を行ってきたのです。

災害対策に完璧はありませんし、時間とお金をかけて計画的に地道に実行していかなくてはなりません。もし今回の九州北部豪雨と同規模の雨がこの辺りに降ったら、本当に大きな被害が出ていただろうと思うと背筋が凍る思いがします。この予算を確保し、技術者育成と設備投資を十分にすることが安心安全につながります。

無駄といわれ、削減され続けた公共事業がいかに人々に平穏な暮らしを守るために必要なものであったか。これらの災害を通して、その必要性を再認識してもらいたいと考えています。

日本の後進国化を防ぎ、地方を再生させるためにも財政出動が実現できるように尽力して参ります。

-「ひろしの視点」第35号(2017年7月)より-