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衆議院議員 税理士 あんどう裕

ひろしの視点

HIROSHI’S POINT OF VIEW

ひろしの視点

2016/10/04

北陸新幹線・京都南部ルートの実現に向けて

北陸新幹線の京都南部・学研都市ルートを実現するため、「北陸新幹線京都府南部ルート誘致促進同盟会」が9月13日に設立されました。これは、京都南部の12市町村が一体となって実現に向けて働きかけていこうというものです。京都北部は舞鶴市を先頭に、一足先に既に舞鶴ルートについて同様の同盟ができており、要望活動を活性化していますが、京都南部もこれで一体となって要望活動を行うことができるようになります。

整備新幹線とは、昭和48年に日本政府が指定した5つの路線のことを言います。その5路線とは北海道・東北・北陸・九州(鹿児島ルート)、九州(長崎ルート)の5つです。このうち、東北新幹線と九州新幹線(鹿児島ルート)は全線開通済み。その他の路線については、一部開業という状況です。北海道新幹線も「新函館北斗駅」まで一部開業となったのも本年3月のことであり、記憶に新しいところです。

そもそも計画されてから、半世紀近くが過ぎようとしているにもかかわらず、なぜこれほど整備が進まないのか。それは、新幹線が旧国鉄の巨額債務を創り出した要因とされ、無駄な公共事業の象徴のように扱われ、国鉄の分割民営化の流れの中で、国家事業としての予算の確保が困難になったことが最大の原因です。

しかし、高速鉄道網や高速道路・港湾など、経済活動を支える社会基盤整備は、国がしっかりと計画を立て、確実に予算を確保して実行しなくては整備をすることができません。このような社会基盤があるところにこそ、民間企業が進出し、経済活動が活性化していくのです。この半世紀の間、なされるべき新幹線の整備がされてこなかったことは、日本経済にとって大きな損失になっています。

こういった社会基盤の整備がされなかったために、東京一極集中が進んでしまったということもできます。なかなか目に見えることではないので批判もされにくいですが、将来の経済成長のための投資を怠ってきたツケが、地方の衰退や少子化という形で噴出していると言っても良いと思います。

そして、なぜ今、私たちは北陸新幹線の舞鶴ルート、そして、京都南部ルートという話を出しているのか。当初は敦賀から米原を通り、その後は東海道新幹線に入っていくという案(米原ルート)が最有力でした(今でも滋賀県はこの案を推していますし、先日、これを促進する同盟も滋賀において立ち上がっています)。この米原ルートは一番コストが安くすみますが、東海道新幹線は既にダイヤが目一杯です。最繁期には3〜5分おきに新幹線が走っていますので、新たに北陸新幹線の乗客を受け入れる余地がありません。この場合、現在の東海道新幹線の横にもう一本線路を作るという案もありますが、そうすると、既に新幹線が通っている地域にしか経済効果が及ばないため、国土の均衡発展の観点からすると、適当ではありません。

将来の経済成長と国土の均衡ある発展を図るために、最適の路線整備はどうあるべきか。それには、大都市を結んでいくことと、国の整備計画のある地域を結んでいくこと。これを優先に考えていくべきでしょう。

地方の都市は、日本の長い歴史に支えられ、地元の皆様の地域に対する愛着もあり、経済活動も長い歴史の中でしっかりした地盤があります。京都の舞鶴は、古くから港としても栄え、日本海側での有数の都市でもあります。これを新幹線とつなげることによって、大きな経済効果が見込めるでしょう。

また、ここから京都駅を結ぶことも、言うまでもなくニーズがあります、更に、京都駅から京都南部(学研都市)を通って新大阪へ至るルートは、学研都市を再認識させ、その整備に向けての国の姿勢にも大きな影響を与えることが期待できます。

けいはんな学研都市は、「東のつくば」と並び称されるべき日本の科学技術研究の一大拠点として整備されました。しかし、「東のつくば」は国内において誰も知らない人がいないほど著名となり、国の予算も確保されていますが、「西のけいはんな」は、もともと民主導で行うというような方向性もあったせいか、なかなか国の予算も思うように確保できず、国内における知名度も中途半端です。ここに新幹線を通すことによって、国内における認知度を高めると共に、研究者の移動の利便性を確保することは、この学研都市の再評価を促すことができ、国の研究機関の誘致や科学技術研究開発予算の確保にも効果があるでしょう。これは、国内のみならず、国際的にもけいはんな学研都市の地位向上につながります。ここを有効利用するためにも、高速鉄道の整備、更には高速道路網の整備が必要なのです。

そしてもう一つ、この北陸新幹線の舞鶴〜京都〜学研都市〜新大阪というルートを提案する意味は、いわゆる「公共事業悪玉論」を抑えて、公共事業予算の増額をし、建設国債を発行して財政出動を促すという狙いもあります。

日本経済は、この20年間ずっとデフレ不況に苦しみ、不況から脱却できませんでした。これは事実です。この間、様々な経済政策が実行されていましたが、20年間デフレから脱却できなかったということは、これらの経済政策は間違っていたということなのではないでしょうか。

そして、この20年間の経済政策の方向性は、「官から民へ」「小さな政府」「無駄な公共事業の削減」「規制緩和や自由化」といったものでした。もちろん、無駄な公共事業は削減されるべきですが、いつの間にか「無駄な公共事業の削減」ではなくて「公共事業の削減」に変質してしまい、必要な公共事業の予算さえ削減されていってしまいました。

これにより、将来の経済成長に資するべき整備新幹線や高速道路・港湾などの整備が行われてきませんでした。更には、国民の生命・財産を守るための治山・治水の予算も削減されました。結果として、東京一極集中が進み、他方で自然災害から国民生活を守ることすらままならず、建設技術者の高齢化が進む中で、若年層に技術の承継ができない状況が続いています。

このままでは、日本の建設業は壊滅状態となり、建設業が壊滅することは、国民生活の安心・安全を守ることができないということを意味します。これは断固として阻止しなくてはなりません。

そのためにも、公共事業予算を確保して仕事量を確保し、建設業に安心して就業できる環境を整備しなくてはなりません。これは、業界の利益だけではなく、国民生活の安心・安全を守るためにも絶対に必要なことなのです。また、日本経済をもう一度成長路線に戻すためにも、政府支出の増大は欠かせません。

北陸新幹線の舞鶴ルート及び、京都南部ルートは、今出ている案の中でも最もコストのかかるルートです。しかし、将来に対する経済効果は他のルートを凌駕するものがありますし、これにより、新幹線にアクセスするための周辺の鉄道や道路の整備を誘発することもでき、波及効果は極めて大きなものです。

また、中央リニア新幹線の名古屋〜大阪間のルート決定時期も近づいてきています。奈良市付近を通ることは既に決定されていますが、北陸新幹線の学研都市駅ができれば、リニア新駅もそこに誘致する理由ができます。それに伴い、JR奈良線・片町線・関西線の複線化や電化にも促進の気運が更に高まるでしょう。これらの整備と道路整備を進め、京都南部の懸案である木津川右岸・左岸の格差の問題も解決していきたい。その起爆剤となるでしょう。

いずれにしろ、このような大きな事業を実現するためには、地元の皆様の後押しご協力と、国による予算の確保が必要です。

皆様のご理解とご協力を宜しくお願い申し上げます。

-「ひろしの視点」第25号(2016年9月)より-