ひろしの視点
HIROSHI’S POINT OF VIEW
ひろしの視点
2017/01/05
憲法審査会が再開されました
昨年の通常国会以来、開催されていなかった衆参両院の憲法審査会が1年5ヶ月ぶりに再開となりました。
今年の参議院選挙で、いわゆる「改憲勢力」が衆参両院で3分の2を超えたことから、憲法改正が現実味を帯び、憲法審査会も注目されています。
この原稿は、11月24日(木)、2 回目の衆議院憲法審査会が開催された後に書いています。
私は現在、衆院憲法審査会の委員に入っているので、2回ともその議論を現場で聞き、発言もさせて頂きました。
憲法審査会は、通常の委員会や本会議と異なり、あらかじめ発言者を決めないで議員が自由に発言できる自由討議の時間があるので、手を上げれば5分以内で発言をすることができます。これはとても有難い制度です。
この2回の議論を聞いていて感じたのは、やはり憲法改正は前途多難だな、ということです。残念なことですが、野党第一党からは、憲法改正を通じて国民生活の安定と発展を図るべし、という声は聞こえてきませんし、安保法案を審議した時の違憲論を空虚にくり返し、日本人の安全安心を守るための憲法とはどうあるべきかという議論をするつもりは全くないという意図がよく分かります。
また、自民党の憲法改正草案の撤回を要求していますが、もともと党内で取りまとめただけの文書で国会に提出してもいないのに、撤回を求められても困ります。ことほど左様に、議論が入り口にすら入れないという状態で、憲法審査会がとても高らかに国家観を議論する場に成り得ないのは、国民にとって大変不幸なことであると思います。明治憲法が不磨の大典と呼ばれ、不備があっても改正することができず、そのことが軍部の暴走を止められずに悲惨な戦争をすることになった一因であることは、よく知られた事実です。現在の憲法も、様々な課題を抱えています。完璧な憲法を作ることは不可能ですから、必ず改正すべき点はどのような憲法でも存在します。それを真摯に議論し、国民に発議できる内容をまとめていくのが、国会の憲法審査会の役割のはずです。この役割を果たすことができないのが、今の国会の姿です。とても残念に思いますが、少なくとも憲法審査会の議論が再開されたのは喜ぶべきことですし、改正の発議ができるように私も努力をしていきたいと思います。
ところで、憲法審査会が再開された11月17日(木)の私の発言について、朝日新聞が記事にし、天声人語でもわざわざ取り上げてくれました。この発言は、戦争の時代を想起し、また国民主権を否定する内容なのだそうです。
以下に、その発言を載せておきます。皆さんは、どう思いますか?
『自民党の安藤裕です。本日は発言の機会をいただき、ありがとうございます。
私が現行憲法において、早急に改正しなくてはならないのは、憲法第二条であると考えます。
以下に、その理由を述べます。現行の憲法第二条では、皇位は、世襲のものであって、国会の議決した皇室典範の定めるところにより、これを継承する、と規定されています。先の天皇陛下のおことばをきっかけに、皇室典範や天皇陛下の譲位についての議論が始められています。有識者会議も設置され、その議論の内容についても様々な報道がなされています。しかし、私は、この皇室の在り方や譲位のことについて国民的議論の対象になること自体に、少し違和感を感じています。皇位継承の在り方について、また、天皇陛下の譲位について、私たちが口をはさむべき内容なのか。我々は、それに口出しをするほど、日本の皇室の在り方について、日ごろから熟考し、長い皇室の歴史について熟知しているのか。そのことについて、はなはだ疑問を感じるのです。
そして、一番問題であると考えるのは、憲法第二条の「国会で議決した皇室典範」という規定です。国会で議決するとなると、私たち国会議員も、当然、皇室典範について発言をしなくてはならなくなります。国会議員が発言をするとなると、当然に、それぞれの議員の信条や価値観に基づいての発言が出てくることは極めて自然なことです。
しかし、私たち政治家が発言を始めると、当然これは政治問題となってきます。様々な集会で政治家が発言すればするほど大きな政治課題となり、国論を二分するような議論に発展していく恐れがあります。
これが結果的に、皇室の政治利用につながっていくのではないでしょうか。長い日本の歴史を顧みて、世界最古の王朝である皇室が、なぜこれほど長い間続いてきたのか。それは、国の権威と権力が分離しており、皇室は日本最高の権威を保ち、国を統治する国家権力は武家等が行使をしてきました。だからこそ、どのような権力者も、天皇にとって代わろうとは考えなかったし、易姓革命のようなことが日本では起きることなく、神話の世界から連綿として続く皇室が、今でも継続しています。権威と権力を分離させておくことが結果的には国の統一を保ち、今の象徴天皇制に繋がっているのではないかと思います。これからも、天皇陛下の権威と国家の権力は分離させておくべきであり、これが今後も皇室が継続していく大切な要素であると考えています。
ところが、今の憲法第二条では、皇位は世襲のものであって、国会の議決した皇室典範の定めるところにより、これを継承すると規定されています。つまり、日本の最高の権威が、国権の最高機関たる国会の下に置かれているのです。先人たちが長い間培ってきた知恵である権威と権力の分離が、現行憲法ではなされていません。
本来、天皇の地位は、日本書紀における天壌無窮の神勅に由来するものであり、憲法が起草されるはるか昔から存在するものです。これを、あとから憲法に文章として規定し、そこに国の権力の源泉となった国民主権を入れ込んだために、権威と権力の分離ができなくなっています。
私は、皇室典範については、旧憲法のように国会の議決を経ずに、皇室の方々でお決め頂き、国民がそれに従うと決めたほうが、日本の古来の知恵であった権威と権力の分離が図られると思いますし、皇位継承や天皇陛下の譲位について政治問題と化し、政局になってしまうことを避けることができると思います。
だからこそ、いま早急に改正すべきは、憲法第二条であると主張したいと思います。皇室は、憲法以前から存在しており、我々が手を出せないところにあるからこそ権威なのです。これを忘れてはならないと思います。以上です。』
-「ひろしの視点」第27号(2016年11月)より-