ひろしの視点
HIROSHI’S POINT OF VIEW
ひろしの視点
2019/10/04
年金財政検証が公表されました
27日に、厚生労働省は公的年金制度の財政検証結果を公表しました。
参議院選挙前に公表されるべきものを選挙後に先送りしたのではないかと疑念を持たれていましたが、これが公表されていたとしても、選挙結果には大して影響しなかっただろうと思います。なぜなら、国民が予想していた通りの結果だったからです。
所得代替率は、よいケースで51・9%、悪いケースで36%ということで、「制度改革は急務」ということです。さっそく自民党の議員からの「改革に汗をかく」という発言が報道されています。一方の野党からはこの結果について、政権の責任を厳しく追及するという発言が報道されていますが、では追及してどうするのか?解決策は自民党と同じ方向なので、国民からの期待値は上がるはずがありません。従って、仮に参議院選挙前に公表されていたとしても、選挙結果には影響はなかっただろうと思うのです。
実は、この年金不信の話は、最近話題になっている現代貨幣理論MMTの考え方を使えば、一気に解決します。年金の原資が足りなければ、国が補填すればいい。ただそれだけのことです。老後の生活に2000万円不足するのであれば、年金をそれだけ増額して支給すればいいのです。不足分は国が全額補填するのです。国にはそれだけの力があり、国民生活を守ることができるのです。それが国家権力というものです。
しかし、今の制度改革の方向性は、厚生年金の適用拡大、基礎年金の拠出期間の延長、年金の支給開始年齢の引き上げ、マクロ経済スライドの適用拡大など、国民の負担を強いることばかりです。
厚生年金の適用拡大は、中小企業の経営に重大な影響を与えます。恐らくこれを強行すれば、パートの短時間化と人材派遣への移行が進み、パート労働者にも大きな負担を強いることになるでしょう。もちろん、厚生年金に加入しておけば老後に受け取ることができる年金額は確実に増えるので、労働者にとっては悪い事ばかりではありません。しかし、現在の状況で適用拡大するのは、中小企業そして労働者の双方にとって非常に厳しい試練となるでしょう。
支給開始年齢の引き上げは論外です。これは政府も分かっていて、「年金を受け取る年齢を自分で決めることができますよ。年齢を後ろにすればするほど、所得代替率が上がる、つまり多くもらうことができますよ」という制度に変えようとしています。
もちろん、受け取る年齢を自分で決めて後ろ倒しすることによって、受け取る年金額が増えるのであれば、それを選択する人も増えるでしょう。
ただ、人によっては働きたくない人もいます。そういう人も、年金受給額が少ないために働かざるを得ない状況が生まれます。また、高齢者が働き続けることによって本来なら若い人に支払うことのできた賃金が、高齢者に渡ることになり、結果として若年層の賃金上昇を阻害し、少子化に拍車をかける結果となります。
マクロ経済スライドの拡大も問題です。マクロ経済スライドとは、読んだだけでは意味の分からない制度です。わざと分からないような名称にしたのでしょう。年金は、物価上昇率に応じて支給金額を変えています。そうしないと、インフレ時には実質的は年金が目減りしてしまい、生活が徐々に苦しくなっていくからです。そうならないように、物価上昇率に応じて年金額を増やしていくのが年金の考え方です。
しかし、マクロ経済スライドという制度は、年金財政が厳しいので、物価上昇率に応じて上げるべき年金支給額を、上げるべき金額から少し目減りさせて支給することにするという制度です。年金生活者は金額は同じでも、徐々に生活が苦しくなるということになります。
これらの改革に、これからの自民党は取り組むことになるでしょう。私以外の自民党議員は、ほとんどが「国民に負担を強いる改革になるが、年金の持続可能性の維持、そして信頼のためにやむを得ない改革だ」「国民に厳しい改革であっても、誠意とまごころをもって説明すれば、必ず分かってもらえる。それが政治家の責務だ」という正義感でこの改革に取り組むでしょう。
しかし、この改革の方向性は完全に誤りです。その誤りの根幹は「日本の財政は危機的状況であり、国家財政はこれ以上年金や社会保障費を負担できない」という間違った思い込みです。
非常に残念なのは、この改革に取り組む議員が正義感と責任感から誤った改革をしてしまい、結果として日本経済を凋落させ、財政はますます厳しくなり、少子化が進行するという悪循環を起こしてしまうということです。まさに平成の時代がその時代でした。
繰り返しになりますが、現代貨幣理論MMTの考え方を使えば、年金受給開始年齢を60歳に据え置いたままでも、所得代替率80%なら80%の年金を支給することは可能だし、国民や企業が負担している厚生年金保険料、国民年金保険料は軽減することが可能です。本当は、年金制度を根本から見直す、この方向の制度改革が必要なのです。
何とか、この方向で改革できるように、尽力してみるつもりです。なかなか多勢に無勢で厳しいものがありますが、今、政府が出さなくてはならないメッセージは「年金は約束した通りお支払いすることができます。だから安心して下さい」というものなのです。不安を煽り、負担を強いるものであってはなりません。
これからも、正しい政策実行に努力して参ります。皆様のご支援を、どうぞよろしくお願いいたします。