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衆議院議員 税理士 あんどう裕

ひろしの視点

HIROSHI’S POINT OF VIEW

ひろしの視点

2020/06/08

コロナウイルス蔓延に端を発する「第二次世界恐慌」の始まりのおそれ

コロナウイルスの蔓延が世界中をおびえさせています。

先月までは、これほどの影響が出るとは予想していませんでしたが、2月末の総理発言による学校休校、各種イベント自粛要請以来、日本の経済活動は著しく停滞し、日本全国で深刻な影響が出始めています。

ただでさえ海外、特に中国からの観光客の激減に加えて、日本人も経済活動を全国的に縮小したのですから、深刻な影響が出るのは当然です。しかも、経済活動の縮小は世界的なレベルで行われ、イタリアでは外出禁止、アメリカでも海外渡航禁止など、世界各国でいままでにない蔓延防止措置が採られています。

これまでの不況は、一部地域で発生して短期間で終息するものでした。いろいろな研究からも、景気は一定のサイクルで好況と不況を繰り返す、ということが言われており、その景気循環のなかでいかに不況を短く終わらせるか、好況を長く持続させるかが各国の経済政策の目標でした。

しかし今回のコロナウイルスは、まず感染症の予防という課題が経済政策よりも優先されています。未知のウイルスであり、どの程度蔓延して死者がどの程度出るのか、予想がつかず、さらに治療薬がない中で蔓延を防止しなくてはなりません。世界各国が経験したことのない感染力の高い未知の感染症との戦いに突然巻き込まれ、大混乱しているのです。これは、日本だけではなく世界各国同じであったと思います。

この感染症は、当分の間世界中を震撼させ、大きな影響を与え続けるでしょう。簡単には終息せず、新型インフルエンザと同様にいつでも普通にかかる感染症としてこれからも人類と共存していくものと思われます。一日も早い薬の開発が望まれます。

一方で、経済活動の停滞による経済収縮は非常に厳しいものになっています。日本でも、総理発言以来、すべての集会が自粛され、総会や歓送迎会シーズンで毎年賑わう飲食店もすべての宴会がキャンセルされ、閑古鳥が鳴いています。これだけありとあらゆる業種における消費が一気に蒸発してしまう現象は、おそらく今生きている人は経験したことがない大規模で深刻なものです。

リーマンショック以上の、という表現が使われていますが、すでに不況(Depression)ではなくて恐慌(Panic)に突入しているのです。

恐慌とは、所得が急激に減少して倒産・廃業が続出し、失業者が激増するとともに生産能力が徹底的に毀損される状態です。以前の世界恐慌は第二次世界大戦前夜に発生しました。これが、今まさにこの現代において発生しようとしています。「第二次世界恐慌が始まった年」と歴史に残る年になるかも知れません。

今、政府では緊急資金繰り対策として特別融資の制度の活用を促していますが、これでは全く不十分です。先の見通しがないのに、借金を増やせと言っても不安が増すばかりです。特に今回のコロナウイルスの蔓延はいつ終息するのか、予想ができません。予想ができない中で借金だけ膨らむのはとてもつらいものです。

そこで、私が主宰する「日本の未来を考える勉強会」では緊急提言をとりまとめ、3月11日に岸田文雄自民党政務調査会長と西村康稔経済再生担当大臣に、翌12日には二階俊博自民党幹事長に提出しました。

自民党議員は、あまり自ら事業をしたことがないせいか、資金繰りのつらさについての実感が乏しいように感じます。今回のコロナによる経済対策においても、資金繰りで「融資を早くしろ」という意見は出ますが「損失補償をしろ」という声は出ていません。

考えてみると、東日本大震災の時でさえ、債務はそのまま据え置き、返済猶予はしたものの返済免除は行われませんでした。被災者は、資産が流されて無くなっているのに負債だけ残るということになったのです。さらに生活再建ための借金を新たに抱えなくてはなりませんでした。借りたものは返すのが当たり前で、決して返済免除は認めなかったのです。

どこまで救うのかという議論もあろうかと思います。しかし、国はこれらの被災者に対して、負債を肩代わりすることはできますし、その力は持っているのです。しかし、残念ながら国会議員がその力に気づかず、手を差し伸べることができるのにそうしなかった。それどころか、復興財源が足りないからと増税すらしたのです。

今回はそれがないように、まずプライマリーバランス黒字化目標は当面延期し、さまざまな経済対策の財源は、躊躇なく国債を発行すべき。そして事業者には、固定経費が十分払えるだけの粗利補償、つまり普通に営業していたら得られたであろう利益を補償する制度が必要だと提言しました。従業員の雇用を守るための雇用調整助成金の制度はありますが、これはあくまでも雇用を守るもの。事業者が毎月支払うものには、人件費だけでなく、家賃やリース料、公共料金、そして借入金返済、買掛金支払いなどがあります。

急激に売り上げが落ち込んで、これらの支払いができない事業者が激増しているのです。

これを融資ではなくて資金を渡しきり、返済不要という形にすれば、安心して雇用が守れるし、関連している事業者も安心できます。どこかで買掛金の支払いが滞れば、それを受け取るはずだった事業者の資金繰りも行き詰まることになり、連鎖倒産が発生します。こういう現象を食い止めなくてはなりません。だから融資ではなく粗利補償なのです。

そして消費税を当面ゼロにする。私たちの勉強会では、これまではずっと「消費税は5%に戻すべき」と主張してきました。しかし、今回のこれだけの経済被害を見渡したときに、消費税5%では少な過ぎるし、メッセージ性もない。ここは消費税ゼロにするべきだ。そういう意見が大勢となり、これを提言しました。

消費税は、常日頃から逆進性が問題だと言われてきました。つまり、所得の低い人ほど負担率が高く、所得の高い人ほど負担率が低くなるということです。年収200万円の人は、貯蓄をする余裕もなく、全額消費に使うでしょうから、所得に対して10%の消費税を負担していることになります。それに対して、年収1000万円の人は、全額を消費には回しませんから、例えば500万円を消費に回すとしたら50万円の消費税負担となり、負担率は5%ということになります。

これをゼロにすると、逆の効果が生まれるので、年収200万円の人には20万円の現金を渡すのと同じ効果があり、年収1000万円の人には50万円の現金を渡すのと同じ効果があることになります。

昨年10~12月期のGDPは年率でマイナス7・1%成長となりました。明らかに消費税増税が悪影響を及ぼしています。これまで政府は「十分な増税対策を施したので影響は軽微であろう」と説明してきたのですが、結果として増税対策は不十分であった、と言わざるを得ません。

そこに1月以降はコロナショックが到来したわけですから、1月以降のGDPはさらに悪化するでしょう。2019年度はマイナス成長になることがほぼ確定しています。

さらに、今回は世界経済が恐慌に突入する状況ですから、これまでやったことがないくらいの巨大な、大胆な経済対策が必要です。だからこそ、融資ではなく粗利補償。消費税はゼロなのです。消費税をゼロにすると20兆円ほど国民に支出することになります。

さらに30兆円規模の粗利補償を含む財政出動をすることによって、あわせて50兆円を国民に渡す規模が必要だと考えています。しかし、コロナウイルスによる経済の停滞が長引けば、もっと巨額になるかもしれません。

しかし、この国は財政支出をいくら拡大しても相当程度まで大丈夫です。50兆円程度ならびくともしません。それよりも、国民の生活を、これまで暮らしてきた水準を維持しながら安定的に続けてもらうこと。安心してもらうこと。そして雇用を守り、反転攻勢に出るときに事業者が倒産や廃業で存在しないという状態を作らないこと。これが何よりも大事だと思っています。