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衆議院議員 税理士 あんどう裕

ひろしの視点

HIROSHI’S POINT OF VIEW

ひろしの視点

2021/01/03

高すぎる株価

日本の実体経済が停滞するなかで、株価だけは順調に上昇しています。
1月22日現在で日経平均株価は28,631.45円。コロナ禍でも堅調な値動きを続けています。
株式取引も、すでにAIが導入されて、瞬間瞬間の値動きにより自動的に売買されるようになりました。本来の株式投資からかけ離れて、短期で利益を確定して売り抜ける、ということが日常的に行われるようになりました。

本来の株式投資とは、ある会社の経営者や技術力、経営戦略等を応援すべく、自らのお金を企業に預け、企業が利益を得たときに配当の形で分配してもらうことが目的でした。いまのようにコンピューターや電子取引のない時代に株式取引や株式市場は整備されたので、自分が投資した会社の業績を気にして、配当があるかどうかを心配するのが当初の投資家の心情だったことでしょう。
会社が一発大きな事業を当てれば大きな配当が得られる。そんな夢をみて投資をした人もいたのではないか。あるいは、鉄道会社などは地域に鉄道という新規インフラを整備する、という企業目的に賛同して、配当は度外視して私財を投資した、という場合もあるでしょう。
いずれにしろ、株式投資は、本来は「長期投資」が基本であり、短期取引は想定されていませんでした。
だから、株主総会などで株主から経営者に対する質問も、経営方針について真摯な質問がなされたでしょうし、安定的な利益を上げることや社会貢献が求められていたと思います。

しかし、いまの株式市場は超短期主義。コンマ秒の単位で売買され、株主は長期の安定的な企業の成長や社会的意義ではなく自らの利益の最大化を目的とするようになり、まったく様変わりしてしまいました。
コロナ禍によって、米国の大富豪の資産は100兆円増加した、という報道もあります。コロナによる企業支援で大量の融資が行われ、本来必要のない企業まで融資を受けているケースもあります。万が一に備えて、それは仕方のないことです。
しかし、そのお金を遊ばせているのはもったいないので、とりあえず株式投資に回す動きも見られます。ある意味、株式市場はバブルの様相を呈しているのです。

コロナによって職を失い、急速に貧困化してしまう人たちと、もともと資産があってコロナ禍でも資産が増加してしまう人たちがいる。まさに、国民の間で分断が起きてしまいます。
これを是正するのが、本来の政治の役割です。
これからやらなくてはならないのは、超短期で株価の値動きだけで利益を確定して売り抜けるような行動には懲罰的課税を導入して、そのような短期取引は事実上禁止する。

さらに、株式売買や配当金には課税上の優遇措置があり、どんなに稼いでも税率は20%で抑えられていますが、これを普通の勤労所得と同じように累進課税を適用してそれなりの税負担をしてもらう。そんな改革が必要です。
いま、経済政策担当大臣の部屋には、株価ボードが設置されています。いつ頃からかは覚えていませんが、「大臣室に株価ボードが設置されました」というニュースが流れていたのを覚えています。しかし、株価はもはや実体経済と乖離したところで動いており、経済政策の指標とするには不適切な指標になっているように思います。
株式市場の改革と課税方式の見直し。これはこれからの大きな課題として取り組んでいかなくてはなりません。